石の値段
石工バルドが示した正式な見積もりは、ミラの予想より高かった。井戸の目地と縁を直すだけで、村の共同金の大半が消える。エダは春に町医者へ払った金も記し、「これを出せば冬の塩が買えない」と言った。バルドは値を下げず、工程ごとの仕事と危険を説明した。
村人からは職人が足元を見ているという声も出た。ミラは怒る前に必要な石材、運搬、乾燥期間、作業者の人数を聞いた。費用の多くは作業日より準備に掛かるらしい。バルドは自分ができない作業も明かし、足場は別の職人が要ると話した。
ベルクは井戸が村で唯一の水源ではないことを確かめた。小さな湧き水が北の林にあるが、夏には流量が落ちる。井戸の修理を先延ばしするなら、その間にどれだけ不自由を引き受けることになるか、皆で考える必要があった。ダレンは危険な縁だけ先に直す案を出した。
バルドは部分工事なら請け負えると言い、残りの石材を買う期限も急がせなかった。ただし部分的に直したからといって、全て安全になったと誤解してはいけない。ミラは白い印の石だけを直す予定と、修理できない部分の柵を残す予定を書き分けた。
見積もりを聞いたあと、ベルクはバルドに茶を出した。村が困っているからといって、旅人の労働を無償にしてよいわけではない。バルドは熱い茶を飲み終えると、翌月なら半日の空きがあると教えた。大工や農夫と同じく、石工にもほかの仕事と約束があるのだった。
会議のあと、エダが帳面を抱えて座り込んだ。「守るところが多すぎるね」。ミラは隣へ座り、まだ残る銅貨を一緒に数えた。使わない金は今夜の安心になる。必要なところへ使う金は、明日の安心を増やすかもしれない。その区別は、いつも簡単ではなかった。




