熱を持つ壁
雨のあと、粉屋の石壁が夜になっても湿っていた。ミラは隣家の壁を手で触り、その違いを確かめた。粉屋の軒から落ちる水が、土の同じ場所を打ち続けている。地下へ染みた水が穀物庫の壁へ回っていた。粉屋の主人ヨレンは忙しさに紛れ、十年もそれを気にしていなかった。
「樋を付ければいい」とギルが言ったが、銅板など村にはない。そこで樹皮を重ねて試した。短い樋は強い雨に負け、水が途中でこぼれた。ミラは失敗した箇所に小石を置き、どちらへ流れたか印を残した。次は二本を重ね、末端を石の溝へ向けた。雨のたびに見直せばよいとヨレンは言い、初めて粉屋の外側に見回りの時間を作った。
樋の試しの日、ヨレンは粉挽きをしながら窓越しに水の道を眺めた。雨脚が強まると、樹皮の継ぎ目から細い筋が落ちる。ギルはそこへさらに樹皮を重ねたが、今度は重さで先端が垂れた。ミラは支えの棒を一本増やし、こぼれた位置を炭で壁に印した。丈夫な道具が買えなくても、同じ失敗を繰り返さずに直す方法はあった。
作業を見ていたニーナは、通りがかりに湿った石の匂いを確かめた。地下へ水が入るなら、近くに置いた薬草も傷むかもしれないという。そこで粉だけでなく他の荷物も壁から離した。修理が終わっても念のため数日間は同じ場所を空け、雨の翌朝に床を見る習慣が残った。
粉挽きが止まる日、村の鍋も止まる。だから直す価値がある。それを知っている者は多かったが、責任の所在が曖昧だった。ミラは粉屋の修理を村全体の仕事にせず、材料を村から出し、点検をヨレンに任せる案を村長へ持っていった。雨の翌朝、壁はまだ冷たかった。それでも床の濡れた範囲は、確かに狭くなっていた。




