桶を置く場所
水運びの負担は、道ができただけでは減らなかった。共同井戸には朝に人が集中し、長い列ができた。かまどの火を見ながら待てない者は、薄暗いうちに出てくる。ミラは誰が何時に水を使うか聞いて回った。畑仕事の家は夜明け、織物の家は午前、鍛冶屋は日が高くなってからだった。
村長の庭に古い水甕が二つあった。割れはないが、重すぎて動かせない。ミラはそれを井戸脇へ移す代わりに、使い道を限定した。火事と急病のときに使う水を満たし、普段の水汲みには使わない。列の長さは変わらないかもしれない。それでも緊急時に井戸へ走る必要は減る。
甕を運ぶ日は、ガルドが鉄の輪を見て安全を確かめた。長く使われなかった水甕には、小さなひびが入っていることもある。水を半分まで満たして一晩置き、漏れないと分かってから使うようにした。蓋もただ載せるのでなく、風で飛ばされないよう紐で留めた。火を消す水が濁って使えなくなるのでは困るからだ。
当番表を見たサラは、日が暮れた後に水を汲みに行く人を減らすよう提案した。補充は昼のうちに行い、夜に使った時は翌朝最初に報告する。赤い布は遠くからでも見えたが、村の子どもには遊びで引かないよう理由を話した。ミラが言葉を選んで説明すると、メイは真面目な顔で蓋に触れずに帰った。
ある朝、鍛冶屋の炉から火の粉が飛んで藁に移った。近くの子が甕の蓋を叩き、大人が二杯の水を掛けて消した。鍛冶屋は青い顔で「いつもなら川まで走ってた」と言った。ミラは甕を満たし直す当番を追加し、使った日の記録を付けた。便利なものほど、空になっている時に人を裏切る。蓋の上には、誰でも読めるよう赤い布を結んだ。




