↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村づくりは、麦を数えるところから――ハルヴェ村のミラ  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/192

針と麻布

冬衣の繕いができる家は、毎年同じではなかった。去年まで針を持っていた母親が病に倒れ、穴の開いた袖のまま働く子がいる。ミラは自分の古い上着を持って、仕立屋のレアを訪ねた。「これを直せる?」と問うと、レアは簡単だと答えた。「じゃあ、教えて」。レアは笑い出した。


二人で縫い方を教える夕刻の集まりを作った。最初は針を折る者が続き、糸を結ぶだけで夜になった。仕事を増やすなという声もあった。だから参加は任意とし、繕った衣服はまず持ち主へ戻すことにした。よその家の布を勝手に使わない。針を借りたら返す。そんな決まりも一緒に決まった。


針を覚える席には、手の震える老人も来た。若い者より時間が掛かるが、布を折るのは上手い。レアは縫い目の細かさだけで出来を決めず、外れにくい留め方を教えた。ミラは自分の指を刺してしまい、血を布へ付けないよう慌てて手を引いた。失敗した縫い目をほどく時には、ルークが糸端を拾ってくれた。


夜の集まりを続けると、灯りの油が減ることも分かった。参加者は持参できる分だけ灯油を持ち寄り、長居しすぎないよう鐘が鳴る前に片付ける。それでもある晩、風の音が大きくて帰れない者がいた。レアは皆を炉辺へ座らせ、古い布の端切れから小さな袋を作る手順を話した。針を持たない時間にも、覚えられることがあった。


ルークは自分の手袋の裂け目を不格好に縫い、「これで薪を持てる」と言った。レアは縫い目をほどかず、指の曲がるところだけ補強した。ミラの上着も袖口だけが新しくなった。家々で眠っていた麻布の端切れが、小箱へ集まる。新しい衣服を買えなくても、寒さをそのまま受け入れなくてよい。村の灯りは、以前より少し遅くまで消えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。