針と麻布
冬衣の繕いができる家は、毎年同じではなかった。去年まで針を持っていた母親が病に倒れ、穴の開いた袖のまま働く子がいる。ミラは自分の古い上着を持って、仕立屋のレアを訪ねた。「これを直せる?」と問うと、レアは簡単だと答えた。「じゃあ、教えて」。レアは笑い出した。
二人で縫い方を教える夕刻の集まりを作った。最初は針を折る者が続き、糸を結ぶだけで夜になった。仕事を増やすなという声もあった。だから参加は任意とし、繕った衣服はまず持ち主へ戻すことにした。よその家の布を勝手に使わない。針を借りたら返す。そんな決まりも一緒に決まった。
針を覚える席には、手の震える老人も来た。若い者より時間が掛かるが、布を折るのは上手い。レアは縫い目の細かさだけで出来を決めず、外れにくい留め方を教えた。ミラは自分の指を刺してしまい、血を布へ付けないよう慌てて手を引いた。失敗した縫い目をほどく時には、ルークが糸端を拾ってくれた。
夜の集まりを続けると、灯りの油が減ることも分かった。参加者は持参できる分だけ灯油を持ち寄り、長居しすぎないよう鐘が鳴る前に片付ける。それでもある晩、風の音が大きくて帰れない者がいた。レアは皆を炉辺へ座らせ、古い布の端切れから小さな袋を作る手順を話した。針を持たない時間にも、覚えられることがあった。
ルークは自分の手袋の裂け目を不格好に縫い、「これで薪を持てる」と言った。レアは縫い目をほどかず、指の曲がるところだけ補強した。ミラの上着も袖口だけが新しくなった。家々で眠っていた麻布の端切れが、小箱へ集まる。新しい衣服を買えなくても、寒さをそのまま受け入れなくてよい。村の灯りは、以前より少し遅くまで消えなかった。




