崖の古い道
採石場の話を聞いたオスカーは、昔使った道だけ見ておこうと提案した。石を掘らなくても、荷車が通れるか知っておけば判断の役に立つ。ミラはハロルドと一緒に丘へ向かい、途中の曲がり角に生えた若木を見た。十年近く人が通っていない道は、幅も形も記憶と違っていた。
斜面には鹿の足跡があり、雨で流れた土が道を覆っていた。遠くに白い岩肌が見えたが、そこへ近づく崖の縁は崩れている。オスカーは縄の端を結び、危険な場所の手前で引き返した。ミラは遠くから見える割れ目だけを紙に描いた。
帰り道、ハロルドが「道を戻せば木も運べる」と言った。しかし森の木は共有地ではなく、伐採には古い取り決めがある。さらに道を広げれば雨水の流れが変わり、下の畑へ泥が落ちるかもしれない。ミラはできる仕事より、始めた後に増える責任の数に驚いた。
村に戻ると、ギルが採石場の石より今ある橋の廃材を使えないかと尋ねた。橋を外せば運搬路が完全になくなるが、既に危険で通れない。バルドに材の状態を見てもらってから決めることにした。壊れた物も無条件で役に立つわけではない。
丘を下る途中、ミラの靴紐が切れた。ハロルドが代わりの縄を貸したが、長すぎて斜面では引っ掛かる。オスカーは短く結び直し、歩幅を小さくするよう教えた。道を調べに来た者も、自分の足元の危険を見落とす。村へ戻ったミラは靴の紐を修理してから帳面を開いた。
ミラは地図の採石場へ小さな印を付け、その横に「立入危険」と書いた。岩山が見つかっただけで村が豊かになることはなかった。何がそこにあり、何をしてはいけないのかを知れた一日だった。帰りに靴から泥を落とすと、丘の赤い土が水桶の底へ沈んだ。




