誰の草刈りか
境界の柳の周囲へ誰が草刈りに入るかで、二つの村が揉めた。土地の持ち主が決まらないなら、勝手に刈った草を持ち帰るのは盗みだと言う人がいた。だが草が伸びれば、通行止めの縄も見えなくなる。ミラは草を取ることと、草を所有することを分けて考えられないかと提案した。
グレサの長老は、刈った草をどちらの家畜へやるか争うなら手を出さないと言った。ニコは飼料にしたい気持ちを抑え、刈った草を岸の決まった場所へ積む案を出した。乾かして腐らせず、両村が用途を決めるまで使わない。作業の目的は安全な見通しを作ることだと皆で確かめた。
草刈りの日、雨が降り始め、刃物を持つ手が滑りやすくなった。ハロルドは作業を止めた。遠くから来たグレサの男は日当を失うと怒ったが、ミラは中止した日も途中まで働いた分を払うべきだと言った。金を出す村は双方の共同で、エダと隣村の記録係が目の前で額を合わせた。
翌日、晴れて草は刈られた。積んだ草を見て、子どもたちは山羊へ持っていきたがった。ニコは約束を説明し、勝手に持ち出さないよう頼んだ。所有が決まっていない場所では、小さな善意が別の人の不信に変わることがある。
草刈りへ使う鎌は両村で形が違い、グレサのものは長い柄が付いていた。ハロルドは初めて持つ刃物を試そうとして、ユナに持ち方を直された。慣れない道具を急いで使えば事故になる。結局、それぞれが使い慣れた鎌を持って作業し、柄の違いだけ後で話し合った。
夕方、柳の根元がよく見えるようになった。倒れた石の位置も、これまでより確かめやすい。ベルクは隣村の長老と並んで岸を歩き、今度の会議はどちらの村で開くか相談した。境界そのものは動かず、話し合う場所だけが一歩近づいた。




