境目の柳
グレサとの境にある古い柳が、今年になって大きく傾いた。根元には雨水が溜まり、川岸の土が崩れている。ハルヴェの農夫は境界を守るため木を残したいと言い、グレサの女たちは倒れれば通り道を塞ぐと心配した。ミラは木が誰の土地に立っているか、ベルクの古い地図を見た。
地図には柳の印がなく、畑の端を示す石だけが描かれていた。石は草に埋もれ、近年は誰も確かめていない。ベルクは若い頃の記憶を話したが、グレサの長老は違う位置を覚えていた。どちらも嘘をついているようには見えなかった。
木を切るかどうかの前に、通行の安全を決める。オスカーは柳の下へ縄を張り、雨の日は人を通さないよう頼んだ。隣村も同じ印を付けることにした。境界を巡る争いが片付くまで危険を放置する理由にはならない。
数日後、グレサの女が古い洪水の話を持ってきた。川が流れを変えた年、畑の石が三つ流されたという。ハルヴェのオル婆もその年を覚えていた。ミラは木の位置だけで所有を決めることの危うさに気づき、両村で残る石の数を数え始めた。
柳には鳥の巣があり、枝を落とせば雛も落ちる季節だった。グレサの女は木を切りたい一方、巣を見てためらった。オスカーは巣が空になる時期を確かめ、それまでは下を通らない案を示した。急ぐ理由が安全なら、離れる道を作るのも同じくらい大切だった。
柳の枝は夏風に鳴り、まだ葉を落とさない。切るか残すかは決まらなかったが、柳の下を歩く者はいなくなった。ミラは争いがなくなったとは書かず、まず怪我人を出さないために合意したことを残した。土地の線が曖昧でも、人が立つ場所は確かめられた。




