帰り道の帳面
市から戻る荷車に、レアは売れ残りの袋を整然と重ねた。リネは売れた数を何度も数え、計算が合わないと眉を寄せる。ミラが確かめると、売り場で修理を頼まれた紐の代金が麻袋の欄に入っていた。銅貨の総額は合うが、誰の仕事で稼いだかが違う。
レアは「同じ店で働いたんだから細かいことはいい」と言った。しかし紐を直したのはリネだった。少女は何も言わず、ただ帳面の端を見ていた。ミラは収入を分け直し、道具代と出店代を先に引いたうえで、仕事ごとの取り分を皆で確認した。
フェルンは市ではもっと大きな商人が曖昧な勘定をしていると笑った。エダは「大きいからできることもある」と返した。ハルヴェでは一枚の銅貨で家の塩が変わる。誰の働きを数え間違えたかが分かるうちに、正したかった。
休憩した峠の麓で、リネは初めて自分から話した。以前の仕事場では、売上を見せてもらえなかったという。稼ぎが少ないと叱られても、その理由を確かめられなかった。レアは返す言葉を探し、やがて「今度はあなたも一緒に数えて」と告げた。
道中で荷車の車軸が一度きしみ、皆は荷を下ろして点検した。フェルンは急いでいたが、セランが油を差す間、待たずに進む者はいなかった。商いの銅貨より重いのは売れ残った袋ではなく、村まで歩いて帰る人の疲れだった。帰路の休み場の水も、予定どおり減っていた。
村へ着いた時、売上はまだ小さく、次の市へ出るかさえ決まっていなかった。ミラは道具を倉庫へ返し、レアとリネには休むよう言った。品物が売れた日の誇らしさと、疲れている体を休ませる必要は、どちらも消してはいけなかった。




