売れなかった色
ニーナが染めた青い糸は、市でほとんど売れなかった。色が薄いと客に言われ、彼女は傷ついた。レアの麻袋は目の前で売れたのに、自分の糸だけ残ったことが悔しい。ミラは売れ残りを失敗として帳面へ書こうとしたが、ニーナに止められた。「糸が悪いと決まったわけじゃない」。
その夜、宿の小さな台所でフェルンが教えた。隣町では冬の衣服を染める色は濃い赤が好まれ、青は子どもの祭りにしか多く使われない。染めの質と好みは別のことだという。ニーナは少し安心したが、だからといって次の市で売れる保証はなかった。
翌朝、彼女は市の織物屋を三軒訪ねた。値を聞くだけでなく、どんな布に使うかを確かめた。ある店では青い糸が丈夫なら刺繍に使えると言われ、少量だけ買ってもらえた。別の店は染料が洗うと落ちるかを心配し、その場で水に浸す試験を求めた。
糸は少し色を落とした。ニーナは怒らず、村へ戻ってから染める時間を変えてみると約束した。出店を畳む時、ミラは売れた銅貨と残った糸を別々に数えた。どちらも次に必要な情報だった。市場は買い手の都合で動き、村の努力だけでは決まらない。
ニーナは宿へ帰ってから、染め草を煮た時間と乾かした場所を思い返した。夏の日差しは村の家の壁と市の石壁とで違う。糸が落とした色は濃くはなかったが、買い手が気にするのは衣服を汚すことだった。彼女は次の試験では白い布へ当ててみようと決めた。
帰路、ニーナは青く染まった自分の指を見つめた。「好きな色なのにね」。ミラは「うちの村では、いい色だよ」と答えた。慰めにならないかもしれない言葉だったが、ニーナは笑った。自分たちの価値を知るために、全てを市場の値札へ預ける必要はなかった。




