市場の空き場所
フェルンが次の市へ誘い、ハルヴェの麻袋と修理した木製品を並べてみないかと提案した。売り場を借りるには銅貨が必要で、雨が降っても返ってこない。レアは出した品が売れなかった時にどうするかを気にした。セランは壊れやすい部材を長い道で運ぶ気になれないと断った。
ミラは売る品の値段だけでなく、運ぶ手間、売り場代、残った品を持ち帰る費用を紙に並べた。フェルンは「商人みたいな計算をするな」と笑ったが、彼女は商売を知らないからこそ書きたいと言った。道具の修理を頼まれて村の工房が空になるなら、村人の仕事が止まってしまう。
結局、最初の市にはレアの麻袋十枚とニーナの染め糸を少量だけ出す。セランは車輪を直すための道具を持参するが、注文が多ければ日を改める。荷物の持ち主も別々に記し、フェルンへ全部預けて曖昧にしないことになった。
出発前夜、レアは麻袋の口を最後にもう一度縫った。リネが針目を揃えた袋には小さな印を付ける。少女は自分の名前を付けたがらず、どの袋を作ったかだけ分かる印にした。ミラはその気持ちを聞き、取り分の記録には印と数を結び付けた。
フェルンは出店の位置についても忠告した。門の近くは人通りが多いが、売り場代が高く、荷車を長く止められない。レアは目立つ場所がよかったものの、商品を取り出しやすい通路の奥を選んだ。初めての商いでは、声を張って客を呼ぶより荷物をなくさないことを大切にした。
売り場へ向かう朝、ハロルドが余った布を雨除けに貸してくれた。金を稼ぐための荷車を、村の何人もが見送る。市に出れば必ず売れるとは誰も言わなかった。それでも村の食料を削らずに試せる小さな商いは、ようやく始められそうだった。




