涼しい穴
丘の北側に、昔の炭焼きが使った浅い穴蔵がある。オル婆はそこで蕪を保存したことがあると話した。日差しの強い時期でも中は涼しい。ただし入口の木枠は腐り、奥には水が溜まっている。ミラは食料を移す前に、内部の空気と天井を確かめるよう頼んだ。
ギルは長い棒で梁を突き、乾いた木片が落ちる音を聞いた。セランは入口の土を掘り返すより、崩れた部分を外から補強する方法を考えた。暗い奥へ入るのは危険なので、作業を中止して村の大工に相談する。冷たさを確かめたい子どもたちは柵の外から覗くだけにした。
オル婆は穴蔵を使っていた頃の話をした。冬には野鼠が入り、春になると根菜が腐ることもあった。涼しいから何でも長持ちするのではない。エダは保存する物の種類と入れる期間を聞き、倉庫の記録と比べた。穴蔵の良さはまだ数字にはならなかった。
夕方、ギルは腐った枠の一本を取り外し、同じ長さの新しい木を削った。全部を替えるには材が足りない。橋にも井戸にも木や石が必要で、村の資材は限られている。ベルクは穴蔵の整備を急がず、今の倉庫の風通しを先に直すと決めた。冷たい穴が見つかっても、すぐ食料を詰め込めるわけではなかった。
穴蔵の上には、夏に花を付ける低木が根を張っていた。崩れた土を支えているのか、逆に壁を押しているのか分からない。オスカーは根を切ればよいと言ったが、ギルは急に抜けば土が落ちるかもしれないと止めた。古い場所へ手を入れる時は、見えないところの変化を確かめる時間が要った。
それでもオル婆は嬉しそうだった。「あそこを覚えている人が、まだいたんだね」。ミラは古い場所の用途と危険を板に書き、草に隠れないよう入口の印を付けた。村の昔の知恵を使う時には、昔の失敗も一緒に持ち帰らなければならない。




