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村づくりは、麦を数えるところから――ハルヴェ村のミラ  作者: 竜太郎


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買わなかった薬

隣町から来た行商人が、畑の虫を一晩で消すという粉を売り始めた。村人の一部は欲しがったが、ニーナは成分を尋ねても明確な答えがないことを不審に思った。行商人は「ほかの村では使っている」と胸を張る。ミラは粉の袋を手に取らず、使った畑の様子を見られるか聞いた。


行商人は答えず、値を下げた。それでも買わないと知ると、村を侮辱して去った。ハロルドは好機を逃したと怒ったが、マルタは「効くかどうかより、何が残るか分からない」と静かに返した。畑には子どもも入る。家畜が草を食べることもある。知らないものを撒くには、確かめることが多すぎた。


粉の行商人は瓶の底へ白い沈殿を見せ、効き目の証拠だと主張した。ニーナは匂いを嗅ぐことさえ避け、中身が分からないなら触れないよう村人に言った。ミラは買わなかった理由を説明する時、売り手の人格を悪く言わなかった。ただ、何を畑へ撒くのか分からないことだけを伝えた。


市場へ行く予定のフェルンに、同じ粉を見かけたら使った畑の様子を聞いてほしいと頼んだ。しかし情報が得られるまでは試さない。畑の虫は待ってくれないが、焦りは判断を誤らせる。マルタは虫を取る手を止めず、ニーナは子どもの触れた葉を水で洗った。楽な答えを買わなかった日の仕事は、いつもより多かった。


その夜、ミラは行商人の話を帳面へ記した。売らなかった名前まで残す必要があるのかとエダは不思議がったが、ミラは「また来た時、同じことを聞けるから」と答えた。翌日も虫は葉を食べ、手で取る作業は続いた。近道を選ばなかったからといって、楽になるわけではない。それでも口へ入る物の安全を知らないまま賭けに出ることはできなかった。

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