頼まれなかった柵
隣村グレサから、年配の男が訪ねてきた。ハルヴェでは畑が獣に荒らされなくなったと聞き、柵の作り方を知りたいという。ベルクはミラを呼んだが、彼女はギルとハロルドへ案内を頼んだ。板の厚さも門の位置も、二人のほうがよく知っている。
男は柵を見て首をかしげた。「これだけで獣を止められるのか」。オスカーは足跡の多い畑を選んで囲った事情を説明し、全ての獣を防げるわけではないと付け加えた。隣村は畑が川沿いに長く続いているという。ハルヴェの形をそのまま移しても、材木だけが無駄になるかもしれない。
隣村の男はギルから門の開け方を教わり、ハロルドから獣の足跡を見せてもらった。二人の説明が時々食い違うので、ミラはどちらが正しいと決めず、その場で柵を開閉してもらった。木の削り方と畑の使い勝手は、同じ話ではない。男は何度も質問し、持ってきた紙の余白を文字で埋めた。
帰る前、彼は自分の村では冬に狼が畑へ近づかず、春に猪が増えると話した。ハルヴェと同じ時期に見張りを増やしても役に立たないという。オスカーはその違いを忘れないよう頼み、峠の天候も尋ねた。教えに来た人が教わる側になることもあった。村と村は、同じ地図の上にあっても違う季節を生きていた。
男は図を一枚持ち帰り、礼に乾いた豆を少し置いていった。ミラは豆を倉庫へ運びながら、村長へ言った。「うちのやり方が向こうでも合うとは限らないね」。ベルクはうなずき、無理に教え込もうとしなかった。道を越えて人が訪れることは珍しい。しかしハルヴェの暮らしは、誰かに褒めてもらうために始まったのではなかった。




