印の重さ
徴税役が残した文書には、支払猶予の可能性が記されていた。ただし正式な申請には、郡の上役の印が必要だという。村長は落胆したが、ミラは用紙の端に「申請受領」と書かれた小さな欄を見つけた。今ここで届けた事実だけなら、オルドにも証明できる。
ミラはベルクに頼み、冬の収穫記録と井戸の修理記録を添えて申請書を作った。オルドは書類の多さにうんざりしながらも、受領の印を押した。判断は後日と念を押される。誰も減税が決まったとは言わなかった。ベルクは封書の控えを倉庫へしまい、次の期限を広場の板へ記した。
申請書の控えには、村長の印のほかにエダの署名を添えた。何かあった時、誰が何を出したか確かめられるようにするためだ。紙を破らぬよう薄い板で挟み、雨を避けて包んだ。オルドは余計な手続きだと笑ったが、受領の印を押す手は止めなかった。ベルクは深く頭を下げすぎず、礼を述べた。
帰った役人の姿が見えなくなると、広場に集まった村人は一斉に息を吐いた。税はまだ減っていない。ミラは成功したように話すことを避け、何が決まらなかったかを一軒ずつ説明した。落胆する者もいたが、期待を誤らせるよりよかった。書類の端に残った小さな印は、来年へ持ち越せる村の言葉だった。
その夕方、エダがミラへ尋ねた。「役人を怒らせるのが怖くないの」。ミラは少し考えた。「怖い。でも、何も言わなければ種が減る」。怒鳴る代わりに、書けることを書く。役所が読まないかもしれない紙であっても、村にとっては大事な証拠だった。税の封蝋は固く、畑の土は柔らかい。どちらも簡単には動かないことを、ミラはその日よく知った。




