芽を踏まない道
春の共同作業が増え、村の細道を荷車が行き交うようになった。畑へ向かう近道を車輪が通り、柔らかい畝の端を削ってしまう。ハロルドは怒り、荷車を通すなと叫んだ。運搬を任されたセランは、別の道では半日かかると反論した。ミラは二人を連れて、実際に荷車を押して歩いた。
最初の角はたしかに狭く、荷を積むと畑へ寄らざるを得ない。しかし少し離れた古い石垣を回れば、遠回りでも平らな道があった。途中の段差だけは車輪が越えられない。ギルとセランが木板で小さな渡りを作り、重い荷だけそこを通すことにした。軽い荷や歩く人には、従来の道を残した。
木板の渡りを作った後、セランは重い荷を載せて何度も確かめた。最初の板はたわみ、ギルが下から支えを足した。夜には通らず、雨の日は滑りやすいことも決めた。便利になった道は、前より危険な使い方をされることがある。ミラは渡りの入口へ短い札を掛け、通れる荷の重さを目安で示した。
ハロルドは畝の端に踏まれた小さな葉を見つけ、指で泥を払った。ミラは謝ったが、彼は「誰も悪気でやったんじゃない」と言った。だからこそ道を分ける必要があった。村の仕事が増えれば、同じ場所を使う人も増える。皆が善人であっても、通り道を決めなければ互いの仕事を壊してしまう。
ハロルドは踏まれた芽のうち生きているものを一本ずつ起こした。ミラも膝をつき、土を寄せた。全部は戻らない。通り道を直したからといって、失った芽が生き返るわけではなかった。だから次に同じ場所を踏まない約束が大事になる。新しい木板の脇には、畑へ入らないよう低い縄が張られた。村は少し歩きにくくなり、少し育てやすくなった。




