↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村づくりは、麦を数えるところから――ハルヴェ村のミラ  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/216

地図にならない湿地

村の東には、子どもが近づくなと言われる湿地があった。昔は草地だったと老人たちは言うが、今は水が溜まり、夏には虫が多い。ミラは畑を増やせるかもしれないと考えたが、オスカーに案内されて泥へ足を入れると、すぐに長靴が沈んだ。「この土地には、この土地の水がある」と彼は言った。


ミラは湿地を干す案を急がず、水の出口を探した。湿地の縁には小さな流れがあり、雨の日には村から来る濁り水も入っていた。もし全部を排水すれば、下流の小川が荒れるかもしれない。ニーナは湿地に生える薬草の場所を示し、消えて困るものがあると教えた。


湿地の奥には鳥が巣を作っていた。オスカーは足跡を見つけると立ち止まり、ミラへ近づかないよう手で示した。鳥の姿は見えなかったが、踏みつければ卵が割れるかもしれない。道を作る候補だった場所は、その場で地図から外した。新しい畑がほしいという村人の声は、ミラの耳にも残っていた。


帰り道、ニーナは湿った土から細い草を一本抜き、乾いた土地では育ちにくい薬草だと教えた。薬草を守ることが必ず村の利益になるとは限らない。それでも何があるか知らずに土地を変えるのは危うい。ミラは空欄の多い地図を見て、無理に答えを書き込まないまま机へ置いた。


結局、その日は測った場所へ枝札を立てて帰った。村長は「畑にできなかったのか」と尋ねたが、ミラは「畑にする前に知りたいことが増えた」と答えた。土地を見れば空いているところに何かを作りたくなる。だが空いているように見える場所にも、水や草や獣の通り道がある。湿地の地図には、まだ白い部分が大きく残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。