水が戻る溝
春先の雨で、村の東の畑に水が残った。ハロルドは溝を深く掘りたがったが、下流には二軒の庭がある。水を急に流せば家の裏を削るかもしれない。ミラは畑の端から川まで歩き、道の高低をオスカーと調べた。途中、昔の石溝が落葉で埋まっているのを見つけた。
石溝を全部開けるのではなく、最初は短い区間だけ掃除した。雨の日に水の流れを確かめると、思ったより速く流れ、下流の庭先に泡が立った。そこで出口を二つに分け、小石を並べて勢いを落とした。工事が終わるまで、下流の家の人々には立ち会ってもらった。誰かの畑を助けるために誰かの床を濡らしてはならない。
溝掃除には、小さな熊手を使った。大きな鍬では石を傷め、古い溝そのものを壊してしまう。ダレンは水の出口で石の組み方を確かめ、崩れそうな場所へ手を入れないよう指示した。作業が進むほど土が柔らかくなり、足を滑らせる者が出た。ミラは急いで人数を増やすのでなく、作業範囲を狭めた。
下流の家では、庭先へ流れる水の音を聞きながら眠ることになった。翌朝、住人は「昨夜は前より静かだった」と言ったが、ミラは安心しきらなかった。強い雨が来れば別の流れになるかもしれない。枝札の位置を一つずつ確かめ、雨の翌日に声を聞きに行く約束を残した。水は溝を作った人の予定どおりには流れない。
三度目の雨で、水は畑に長く留まらなかった。ハロルドは嬉しそうに土を握ったが、村長は「これで今年は大豊作だな」とは言わなかった。まだ種も蒔いていない。ミラは土の乾き方と石溝の状態を帳面へ書いた。水の行き先は雨ごとに変わる。うまく流れた今日を、明日も確かめられるようにするためだった。




