↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村づくりは、麦を数えるところから――ハルヴェ村のミラ  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/180

土の匂い

雪の縁から土が顔を出した頃、ハロルドは畑へ踏み込もうとした。春はまだ遠いが、今年こそ収穫を増やしたい。ミラは種の袋を見て、先に土の湿り具合を調べないかと尋ねた。冬の間に排水溝が詰まり、低地には水が溜まっている。去年も同じ場所の麦が倒れたという。


ニーナは薬草を育てる小さな畝を見せ、乾く土と水を抱く土の違いを話した。ミラは土を握って崩れるか確かめ、畑の端に試験区画を作ることを提案した。全体を一度に変えない。麦の種も貴重で、賭けに使えないからだ。ハロルドは最も痩せた畝を選び、別の畝は今までどおり残した。


土を調べる作業に来たルークは、湿った土を手で固めて泥団子を作った。ハロルドは怒ろうとしたが、ミラは崩れやすさの違いを見る手掛かりになると気づいた。もちろん遊ぶために種を踏んではならない。畝の外から少量ずつ取り、元の場所へ戻すようにした。子どもの手にも、土の違いははっきり伝わった。


試験区画の位置は、日当たりだけで決められなかった。傍らの木が朝の影を落とし、風の通りも違う。ニーナは同じ条件を完全に揃えるのは難しいと言った。ミラは「だから結果だけで決めない」と返し、畑で起きたことも一緒に書き留めることにした。何を試して何が変わったのか、分からない部分も残す。


夕方、指先についた黒土の匂いを嗅ぎながら、ミラは冬の麦袋を思い出した。秋に数えた不足はまだ消えていない。春に失敗すれば次の冬が苦しくなる。けれど焦って全てを変えれば、比較するものさえなくなる。畑には小さな枝札が三枚立った。雪の下で守ってきた種は、ようやく行き先を選ばれ始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。