↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村づくりは、麦を数えるところから――ハルヴェ村のミラ  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/168

閉じた納屋

村外れの納屋に、春へ残す種麦が置かれていた。扉には鍵が掛かっているが、持っているのはハロルドだけだった。彼が吹雪の中で倒れたら、誰も取り出せない。ミラが予備の鍵を作ろうと提案すると、ハロルドは顔を曇らせた。「盗まれたら誰が責任を取る」。種は食料よりも大切な時期がある。


ミラは鍵を増やすことを急がなかった。まず在庫を二人で数え、封をした袋へ印を付けた。次に村長の家で鍵を保管する案を出し、使う時は必ず二人以上で立ち会うよう決めた。ハロルドの持つ鍵を奪わない。村の共有物と個人の畑のものを混ぜない。二つの違いを帳面へ残すのに、思ったより時間がかかった。


種麦を数える間、ハロルドは袋の下へ置く板を丁寧に拭いた。湿った床に触れさせないためだ。ミラは共有の種と各家の種で印の色を変えたが、どちらにも重さを書いた札を付けた。責任が違っても、傷む危険は同じだった。種を扱う時には手を洗い、袋の口を長く開けておかない決まりもできた。


予備の鍵を作る作業は、ガルドに頼んだ。新しい鍵は古い鍵より回しにくく、何度か削り直す必要があった。ミラは一度だけ開いたからといって安心せず、ベルクとエダにも試してもらった。鍵があっても開けられなければ意味がない。ハロルドは二人の手元を見守り、納得してから袋の封を確かめた。


最後の袋を数え終えると、ハロルドは自分から予備の鍵を差し出した。「もし俺が倒れた時は、畑を頼む」。ミラは鍵を受け取らず、ベルクへ渡した。自分がいなければ開かない仕組みを作るつもりはなかったからだ。納屋の戸を閉めると、雪に埋もれた畑が向こうに広がっていた。まだ芽の出ない春を守るには、人の信頼も必要だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。