読めない数字
広場の板を見上げるオル婆が、いつもエダを呼ぶ理由にミラは気づいた。絵は分かるが、量を表す線の数を数え切れないのだ。村には数字を覚える機会のなかった大人がいる。ミラは昼の作業が終わった後、鍋の横で簡単な数え方を教え始めた。しかし最初の日、参加者は二人だけだった。
「子どもみたいで恥ずかしい」と言ったのはハロルドの兄だった。ミラは授業という言葉をやめ、畑の種の数を間違えないための相談会にした。木の実を十個ずつ並べ、袋へ移す。オル婆は同じ十でも、一度に数えるより二つの五に分けたほうが分かりやすいと言った。エダはその方法を板の絵にも取り入れた。
木の実を使った数え方が広まると、エダは袋に入れる前に数を声に出すようになった。急いでいる時ほど間違えやすいからだ。オル婆は五粒ずつを小皿に並べ、最後に余った粒を別に置くと理解しやすいと言った。教える側だったミラも、その手順を取り入れた。計算が得意な人のやり方が、全員に合うわけではない。
一度、村の残り麦の数字が前日と合わなくなった。誰かが盗んだと疑う声が出たが、調べると共同鍋へ渡した袋の記録が抜けていた。エダはその場で修正し、理由を書き添えた。間違いを認めた人が責められないようにすることも、帳面を続ける条件だった。数字への信頼は、間違えないふりからは生まれなかった。
一週間後、オル婆は共同鍋で使った薪の数を自分で数えた。大きな数字はまだ難しいが、誰かの説明を黙って信じるしかない状態からは離れた。ミラは誇らしげに見守ったものの、教える側が間違えた日もあった。エダは素直に書き直した。村の数字は偉い人のものではない。そこに暮らす者が確かめられるように置くものだった。




