凍った畑の境
雪が積もると畑の畦が見えなくなり、春になって土地の境を巡る争いが起きた。農夫ハロルドは隣家の杭が去年より近いと疑っていた。ミラは今のうちに測り直そうと提案したが、雪の下では古い境を確かめられない。焦れば新しい争いを作るだけだった。
村長ベルクは昔の土地帳を出した。名義は何度も変わり、読めない字もある。エダは古い村人たちを呼び、どの木が目印だったか聞いた。答えは一致しなかった。ミラは無理に一本の線を引くより、確かに共有できる地点だけ記そうと言った。大きな石、曲がった梨の木、用水路の曲がり角。異なる記憶も消さず、欄を分けて残した。
土地帳には、名前を消した跡が何か所も残っていた。洪水で村を離れた家、病で途絶えた家。ベルクは一つずつ説明したが、全てを覚えてはいなかった。ミラは分からないところを空欄にし、推測で埋めないよう頼んだ。後で誤りが見つかれば、誰かの土地を奪う口実になってしまう。
老人たちは梨の木の下で昔話を始めた。ミラは急がせず、同じ出来事を違う言葉で語る声を聞いた。雪の残る日に境界を確定できなくても、目印となる木の位置は分かる。ハロルドは帰り際、隣家の男と一緒に倒れた古杭を拾った。元の場所へ戻さず、春の測量まで納屋へ預けることになった。
ハロルドは不満そうだったが、隣家の老人が「その年は洪水があった」と語ると黙った。水が土ごと畦を動かした可能性が出たのだ。春の測量まで、双方は争いのある細地を耕さないと約束した。使えない土地が一時増えても、隣同士の恨みを深くするよりましだった。雪の畑に立つ杭は、不確かさを正直に示すための目印になった。




