遠い町への道
隣町ソルンまで、乾いた季節なら半日で着く。冬は雪に閉ざされ、病人を運ぶなら倍の時間がかかることもある。メイの熱が出た夜、馬を出せる家が二軒しかないと分かった。ミラは村長へ、緊急時の道順を確かめる日を設けたいと頼んだ。病人を乗せず、空の橇で試すだけなら危険も少ない。
オスカーが先導し、若者三人が橇を引いた。最初の坂は登れたが、林の陰で轍が凍り、荷台が横滑りした。帰るべきだと一人が言う。ミラはその場で止め、地面の傾きを木枝で測った。遠回りでも広い尾根道のほうが安全だった。町まで行き着く前に日が傾き、皆は引き返した。試しの日に無理をしないと決めていたからだ。
橇を引く若者の一人は、道を知っているつもりだった。幼い頃に父と通った記憶がある。ところが林を抜けると、倒木で景色が変わり、進む方向を失った。オスカーは古い石標を探し、雪を払って方角を確かめた。ミラは地図へ倒木の位置を記し、道の記憶が季節によって変わることを忘れないようにした。
帰村した彼らを待っていたのは、温かい粥と心配した家族だった。予定より早く戻ったことを笑う者もいたが、ベルクは戻る判断ができたことを認めた。無事に帰った経験があれば、次も途中で引き返せる。ミラは橇の底についた傷をギルへ見せ、次に試す前に直せるよう頼んだ。
帰った後、村の板に「冬の橇道」と書くには早いという声が出た。ミラもうなずいた。通れたところと通れなかったところを分けて描き、天候が違えば見直す。レアは橇の上へ敷く古布を集めると申し出た。村の道を知ることは、町へ急げると信じ込むことではなかった。どこまで進めて、どこで戻れるかを知ることだった。




