赤い頬
冬の朝、ルークの妹メイが熱を出した。頬が赤く、咳をすると背を丸める。母親は薬草を煮て飲ませていたが、ニーナは息の速さが気になった。村には医師がいない。隣の町まで行く道は雪で埋まりかけていた。ミラが訪ねると、メイは目を開けたまま小さく笑い、すぐ疲れて眠った。
ミラは治し方を指図しなかった。代わりに、いつから熱があるか、飲めた水の量、咳の回数を母親と記録した。ニーナは温かく静かな寝床を整え、煙を部屋へ入れないようにした。状態が悪くなれば町の医師を迎えるため、馬を持つ二軒へ頼みに行く。雪の道を試しに歩いたオスカーは、北の坂ならまだ通れると報告した。
ニーナはメイのそばに水を置き、咳がひどくなる時刻を母親へ尋ねた。母親は夜に悪くなると言ったが、詳しい時間は覚えていなかった。疲れている者へ正確さだけ求めても答えは出ない。ミラは灯の油が減る頃、共同鍋の鐘が鳴る頃という、家の中で分かる目印を使うことにした。
ルークは妹の寝床へ近づこうとして止められ、廊下で泣いた。ミラは隣に座って、彼にもできることを一つ頼んだ。飲み水の器を洗い、手を清潔にする仕事だった。少年は涙を拭いて立ち上がった。母親が少し休む間、サラが食事を届け、エダは畑の片付けを他の家へ相談した。熱を出したのは一人でも、暮らしを支える手は幾つも必要だった。
夜更け、メイの熱は少し下がったが、皆は眠れなかった。ミラも何度も水桶を取り替えた。朝になると、母親が「昨日より飲めた」と静かに告げた。村の帳面には丸を一つ付けただけだった。人の具合は麦のように正確には量れない。けれど良くなる兆しを見逃さず、悪くなった時に動けるようにする。それが今の村にできる看病だった。




