朝まで残る灯
雪まじりの風が吹いた晩、共同鍋の火が消えた。翌朝の粥が作れなくなると、サラが薪を運んで火種を探した。湿った薪しか残っていない。火をつけ直すのに時間がかかり、老人の朝食が遅れた。ミラは原因を聞いて、夜通し誰かに火を守らせる案を口にしかけた。しかし夜番にさらに仕事を重ねるのは避けたかった。
ガルドは鍛冶屋で使う灰の覆い方を教えた。炭を安全な炉の中で灰に包めば、朝まで熱が残ることがある。ただし建物ごとに炉の形が違う。サラの鍋では何度も試し、換気と火の始末を確かめた。最初の試みは失敗し、朝には冷え切っていた。二度目は少し残った。三度目、焚き付けの細枝に火が移った。
炉の火種を残す試験には、ガルドが一番遅くまで付き合った。灰を掛けすぎると火が消え、少なすぎると熱が外へ逃げる。サラは夜の戸締まりをする時、炉の周りに燃えやすい布がないか確かめた。ミラは何度も試すうちに、朝が少し遅くなっても火の管理を一人へ押し付けたくないと思った。
一度、見回りに来たトビアスが炉の前に立ち、火が残っているか尋ねた。彼は夜番の帰りに薪を運べると言ったが、サラは断った。「あんたは眠りな」。村を守る仕事は足し算ばかりではない。人が休む時間を残す引き算もいる。ミラは灰の厚みを覚えるより、その返事を長く覚えていた。
成功を聞いた村人は喜んだが、ミラは当番表に「火が残らなければ、無理に急がない」と書き加えた。安全より早い朝食はない。オル婆は遅い粥を食べながら、失敗した日の事情を聞いて笑った。「食べられたんだから、いいさ」。窓の外には雪が積もり、足跡のない広場を風だけが横切った。




