ひと冬の取り決め
ベルクとグレサの村長が、川岸の利用について短い取り決めに署名した。春の測量まで、畑を増やさず、危険な橋へ近づかず、草刈りは互いに知らせて行う。どちらが領有するかは決めない。署名を見た若い牧夫は、それでは何も解決していないと不満そうだった。
ミラは確かに境界は未決だと認めた。それでも誰かが怪我をした時の連絡先と、道が崩れた時の中止の判断を明記できた。オスカーは一方の村だけで見張ると負担が偏ると話し、当番の場所を分けた。見回りを増やすのでなく、重複した道を減らす方法を探した。
エダは取り決めの写しを二枚作った。相手に見せる紙と、自分の村で読む紙の内容が違わないよう、双方の書記が読み合わせた。古い地図の写しも別封に入れ、期限が過ぎても証拠として残すことになった。
取り決めの期限を書き入れると、春の測量が遅れた場合の扱いが空白になった。ベルクはその日に全部決めればよいと言ったが、遠い村から代表が来られないこともある。二人の村長は期限までに結論が出ない時、危険な作業の中止だけ継続して再協議すると書き足した。約束が切れた瞬間に勝手な工事が始まるのを避けるためだった。草刈りの回数については数字で縛らず、その都度互いに知らせることにした。
取り決めに押された印は、二つとも同じ大きさではなかった。それでも記された約束は共通だった。
帰りの橋の手前で、両村の子どもたちが雪玉を投げ合っていた。川岸の危険な場所へ走らないよう大人が声を掛ける。ミラは署名された紙を抱え、取り決めが一枚あるだけでは足りないと知っていた。明日もそれを守る手が、川の両側に必要だった。




