見えない来客
雪の夕方、村の入口へ一人の男が現れた。外套を深くかぶり、どこから来たか言いたがらない。オスカーは宿へ案内しようとしたが、男は泊まる金がないと答えた。近くの村で仕事を失い、帰る家も遠いという。事情の真偽はその場では分からなかった。
ベルクは村へ滞在する条件を説明した。男は面倒そうに聞いていたが、温かな水を受け取ると落ち着いた。ミラは名前を尋ねるより先に、今夜安全に休める場所が必要かを確かめた。村の誰かが自分の家へ連れ込むと申し出たが、宿主と本人の同意を得て、共同の空き部屋で一晩過ごすことになった。
男は翌朝、宿の寝具を畳むのに時間を掛けた。扱ったことのない留め具に手間取っていたのだ。宿主は急かさず手伝い、破れた箇所がないか一緒に見た。男は住む場所を見つけられずにいる理由をまだ語らない。ミラも詮索しなかった。ただ、春になれば戻りたい町があると聞き、フェルンへそちらへ向かう安全な荷車が出る日を尋ねた。旅人の一夜は、村の帳面へ定住者として書き込まれなかった。
翌日、男は木を削る職人だと分かった。ただし腕を証明する道具は持っていない。ギルが小さな木片を渡すと、男は見事な留め具を作った。ベルクはすぐ雇おうとしたが、ミラは本人が村に残りたいか聞いた。男は春になれば旅を続けたいと言った。
宿を出る前、男は水を汲む列の最後に並んだ。順番を知らない彼へ、老婆が桶の置き場を教えた。
彼が仕上げた木片は戸の修理に使われた。ミラは技術を得た嬉しさより、去る自由を妨げなかったことに安心した。誰かが来るたび村の一員に数えなくてもよい。冬の宿の灯は、通り過ぎる人のためにも点っていた。




