誰の畑でもない
境界未確定の河原で、雪の下から古い畝の跡が見つかった。グレサの牧夫は自分の祖父が耕した場所だと言い、ハルヴェの老人は昔は共同の草地だったと語った。誰も嘘をついているとは限らない。川が幾度も流れを変え、土地の姿も変わった。
ベルクは畝の跡を証拠として記録したが、すぐ領有を主張するつもりはなかった。グレサの村長も春までそこで新たな耕作をしないと約束した。だが冬の間に枯草を集めたい家があり、全面禁止では家畜の世話に影響する。
畝の脇には折れた陶片が幾つも落ちていた。グレサの老人は昔そこに小屋があったと言い、ハルヴェの老人は洪水で流れた荷車の残りだと思っていた。ミラは拾い集めて由来を決めようとはせず、位置だけ記録した。冬の土を掘り返す危険もある。破片の持ち主など分からないまま、二人の老人は昔の川をしばらく眺めていた。争っている土地の記憶を聞くことと、相手の言い分を全て認めることは違う。
ミラは人が踏んでよい通路と、地面を掘らない範囲だけ暫定的に決める案を出した。両村から立ち会いを出し、争いがあれば持ち帰って相談する。牧夫は遠い会議を嫌がったが、口論を現地で続けるより安全だと納得した。
土地の名を口にするだけで、それぞれの家が別の景色を思い出す。グレサの老人は畑が広かった頃の歌を少し歌い、ハルヴェの老人はその節を知らなかった。どちらも相手を笑わず、河原へ目を戻した。
雪が薄くなった場所には、昨年の草の根が残っていた。ハロルドは畑として使えるかまだ分からないと言った。ミラは土を握り、急いで線を引かなかった。境界を決めることと、今日そこを歩く人を無事に帰すことは、別の仕事だった。




