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村づくりは、麦を数えるところから――ハルヴェ村のミラ  作者: 竜太郎


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来なかった役人

王都から役人が来る年には、村は道を掃き、最も良い麦袋を隠しておく。訪問がない年も税の取り立てだけは止まらない。今年は雪が近いのに、郡の役所から返事さえなかった。村長ベルクは古い封書を見せた。橋の修理と井戸の石材を願い出た三年前の文書だった。封には受領の印がある。それきり何も届いていない。


ミラは読み終えて、返事を催促しようと言った。ベルクは「書いても無駄だ」と肩を落とす。彼女は一度の願いを繰り返すのではなく、橋を使う家の数、雨の日に渡れない荷車、壊れた井戸の位置を別紙にまとめるよう提案した。数字があれば必ず動くとは思わない。しかし受け取った者が何を放置したのかは残る。


封書を読み返すうち、エダは宛先の役所が二年前に移転したと気づいた。旧い印の上から新しい住所が書き足されている。ミラは村からの手紙が届いていない可能性も考えたが、受領の印がある以上、確かなことは言えなかった。村長は怒りを吐き出す代わりに、宛先を確かめるための一行を加えた。小さな間違いで願いそのものが消えるのは避けたかった。


村で集める石材については、ダレンが橋の基礎に使えそうなものと、井戸にしか使えないものを分けた。数を増やそうとして質の悪い石を集めても、運ぶ人が疲れるだけだ。ミラは集める量を先に決めず、職人の確認が済んだものだけを庭へ並べた。手紙を送る準備と手元の修理が、同じ机の上で進んだ。


筆を握るエダの指が冷えていた。紙は高価だから、下書きは古い板に炭で書いた。届けるのは春に商人が来る時でいい。村の冬を役所の返事に預けるわけにはいかない。ミラは使えそうな石を村で集める日も記した。王国を悪く言う声を聞きながら、彼女は手紙の最後に「村民の安全に関わる」とだけ書き添えた。

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