返ってきた封
相談所からリネ宛てに返事が届いた。封には本人の名前だけが書かれている。ティアは中身が気になったが、リネが読み終わるまで席を外した。手紙には契約の真正を確認するため、雇用先の記録と本人が署名した時の状況を調べるとあった。まだ無効と認められたわけではない。
リネは不安そうに、証言のため郡都へ行かなければならないのか尋ねた。エダが読んでも、現時点では書面で質問を受ける選択肢が示されていた。ミラは本人が望めば付き添うと言ったが、リネはすぐには返事をしなかった。自分の言葉で答えたいと考えているのだ。
相談所の手紙は難しい言葉が多く、リネは同じ行を何度も読み返した。エダは意味だけを簡単に言い換えた紙を別に作り、原文はそのまま残した。どちらか一つだけでは、後で話が食い違う恐れがある。ティアは妹が疲れたら今日はやめればよいと声を掛けた。リネは自分で区切りを決めて筆を置いた。誰かの判断を待ち続ける手続きの中にも、自分で決められる小さな時間がある。
レアは仕事場の奥に静かな机を用意した。リネは記憶を辿り、当時の月日を書こうとして何度も消した。姉が迎えに来た年は覚えているが、働かされた最初の日付は曖昧だ。エダは分からないことを分からないまま書く方が確かだと伝えた。
窓の外では雪がやんでいた。机の上の手紙はまだ乾いていなかった。
夕暮れ、ティアは妹へ温めた手袋を差し出した。手紙の内容を尋ねず、明日もいつもどおり働くのかだけ聞いた。リネはうなずいた。封の中には解決が入っていなかった。それでも自分宛ての返事を、自分の机で読めたことは、彼女にとって小さくない変化だった。




