水に沈む杭
測量師の指示で、村人は古い橋から離れた高台に目印の杭を置くことになった。川へ近づく作業ではないと聞き、皆ほっとした。しかし地面を掘ると下から水がにじみ出て、杭は立てても傾いた。ギルは深く打ち込もうとしたが、地盤を知らずに力任せに進めるのは不安だった。
バルドは冬でも土が柔らかい理由を説明し、別の地点を探すよう勧めた。そこはグレサ側の放牧道に接している。ミラは勝手に杭を立てず、境界が未確定であることを記してグレサへ相談した。相手の村長は、杭が領土を主張する印だと誤解されるのを心配した。
杭を動かすことになり、最初に掘った穴を誰が埋めるかという話が残った。小さな穴でも雨が溜まれば、通る人の足を取るかもしれない。ギルは掘った土を戻し、踏んで固めた後に周囲の草を広げた。グレサの牧夫はそこへ羊を近づけないでおくと約束した。測量師へは位置を変えた理由と、以前の穴の跡まで報告する。目印一つを立てるだけの仕事に、地面を元に戻す手間も含まれていた。
そこで両村から一人ずつ立ち会い、測量用の目印であって境界ではないと木札に書いた。字の読めない人には同じ印を描いて知らせた。だが川霧の朝には杭自体が見えにくい。調査の者だけが使う位置に移し、通行の道標とは分けた。
牧夫は自分の放牧道を見渡し、札の意味を別の羊飼いへも伝えると申し出た。
杭が立った夕方、若い牧夫がそこへ羊をつなごうとした。グレサの老人が駆け寄って止め、用途を教えた。ミラは説明したつもりでも伝わらない人がいると知った。橋の形はまだ決まらない。代わりに、川の両側で同じ一本の杭を気に掛ける人が増えていた。




