戻った銅貨
麻袋の注文を取りに来た商人が、前の取引で銅貨を一枚多く払ったと申し出た。レアは記憶にないと言い、フェルンも帳面からは確かめられなかった。金額は小さいが、商人は次も取引できるか心配していた。ミラはどちらかを嘘つきにせず、当日の支払い方を聞いた。
注文を受けた日は雪で店先が暗く、銅貨は木の皿にまとめて置かれた。リネは枚数を数えたものの、袋代と運送賃を別々に計算していた。レアは箱を開けて残高を調べたが、別の購入品の釣り銭も混ざっていた。記録だけでは証拠にならない。
新しい領収札には小さな穴を二つ開けた。紐で綴れば風で飛ばされにくく、金額が読めない時も順番を追える。ルークは札に絵を描く役を買って出たが、取引の証は勝手に書き足せない。エダは練習用の紙を渡し、本物には触れない理由を教えた。子どもが手伝うにも、任せてよい範囲を確かめる必要があった。
商人は強く返金を求めず、次から領収の木札が欲しいと言った。エダは今までの札を見せ、金額と支払い先を両方書く欄を追加した。その日の銅貨については双方が納得するまで仮預かりとし、レアは自分の財布から補填しようとしたがミラが止めた。誰の責任か定まっていないのに、作り手だけが負担すべきではない。
木札の紐は、店ごとに違う色で結ぶことになった。見分けやすさも必要だった。
数日後、商人の荷から別件の釣り銭が見つかった。計算違いだったと手紙が届き、仮預かりの銅貨は元の箱へ戻された。レアは安堵するより先に、新しい札の書き方をリネと練習した。ミラは争いが大きくならなかった理由を、銅貨の少なさではなく、決め付けない時間に感じた。




