ふたつの値札
市から戻ったフェルンは、同じ麻袋が商人によって二倍近い値で売られていたと話した。片方はハルヴェで作った袋によく似ている。レアは真似されたのではないかと腹を立てたが、実物を見ていない。値段だけで盗んだと決めるわけにはいかなかった。
数日後、商人が二種類を持参した。高い袋は濡れた荷を運ぶため内側に加工があり、安い袋とは使い道が違った。レアは縫い目の一部に見覚えがあったものの、材料も糸も異なる。ミラは相手を責める前に用途を確かめてよかったと思った。
袋を使った運び手の話も聞くことになった。市場の石畳では底が擦れ、森の泥道では濡れた紐が緩むという。レアは生地を厚くすれば全て解決すると考えたが、重さが増えれば運賃にも響く。リネは取っ手の位置を少し変えた試作品を縫い、運び手が実際に持って確かめてから型紙へ戻した。
ただしハルヴェの袋には弱いところが見つかった。底角が擦れやすい。セランが重い道具を入れて試すと、数日で糸がほつれた。レアは補強を提案したが、縫う時間が増えれば注文を減らさねばならない。リネは同じ補強を全品に施すのではなく、荷の種類を聞いて作り分ける案を出した。
試した袋は売り物に混ぜず、角に別の印を縫った。買い手の荷を実験に使うわけにはいかなかった。
商人は使う者へ袋の扱いを知らせる札を添えると約束し、その代わり納品予定を早めないでほしいと言った。ミラは値札の差に驚いた朝を思い出した。高く売る技術を得るより、何を入れてどこを歩く袋なのか知ることから商いは変わる。レアは新しい型紙を机へ広げ、自分の手で縫える分だけ線を引いた。




