炭の行方
夜明けの台所で、灰の中にまだ赤い炭が残っていた。サラは冷えたと思って掃き集めかけ、近くに積んだ麻布へ火が移りそうになった。気づいたレアが声を上げ、火は炉から広がらずに済んだ。誰かが怠けたわけではない。昨晩は吹雪を避ける旅人が来て、火をいつもより遅くまで使っていた。
ミラは灰を捨てる場所だけを変える案を出したが、ギルは捨てに行く道が凍る朝もあると言った。セランは金属容器ならよいと考えたものの、村に余る鉄は少ない。結局、蓋付きの耐火性の容器を一つ用意し、十分冷めるまで動かさない手順を決めた。熱い灰に水を急に掛けることもしない。
台所の新しい容器を置く場所でも意見が分かれた。外へ出せば誰かが蹴ってしまうし、炉に近すぎれば熱がこもる。サラは片付ける人の足取りを見て、通路の外れに置ける場所を選んだ。使う前に毎回中身を確かめる役は固定しない。気づいた人が声を掛けられる方が、慌ただしい夜には確かだった。
サラは当番を増やすなら、誰が最後に炉を見るかも決めてほしいと頼んだ。料理に慣れた者が最後まで残る決まりでは、その人だけ帰りが遅くなる。ティアは夜の片付けを引き受ける日を申し出たが、針仕事の締め切りが重なる日は無理だと言った。できない日を先に知らせることも約束の一部となった。
レアは危なかった麻布を手に取り、表面の小さな焦げを指さした。持ち主の袋にはもう使えないかもしれない。サラは補修代を台所の共有費から出すことを提案し、皆が賛成した。ミラは火事にならなかったことを喜びながら、焦げた布一枚にも埋め合わせが必要だと思った。




