石の下の音
凍りついた川岸から、夜になると小さな音が聞こえるとグレサの子どもが訴えた。村の橋が崩れる前触れだという噂が立ち、幾人かが松明を持って見に行こうとする。オスカーは暗い岸へ近づかないよう止めた。ミラも危険を放っておきたくなかったが、音の正体を確かめるために誰かを落とすわけにはいかない。
翌日の明るい時間、バルドが安全な距離から水位と氷の状態を見た。薄い氷が流れの中で石に当たっているらしい。ただし橋脚の内側まで見えず、橋そのものが安全になったという判断はできない。グレサの村長は、噂のせいで行商が遠回りしていると困っていた。
音を恐れた行商人は、橋から離れた宿場でも荷の値段を上げた。フェルンはその理由を尋ね、実際には橋を通らない品まで一律に値上げしていると気づいた。しかし道の不安が広がっていることも確かだった。商人ごとに経路を確かめ、根拠のない上乗せには応じない。ベルクは値段の話と橋の危険を混ぜないよう頼んだ。
ベルクは音を「危険なし」と知らせる紙を出しかけた。ミラは文字を見て、確認できたのは音の一因だけだと指摘する。エダは掲示を書き直し、川岸立入禁止と橋の通行止めをそのまま残した。子どもが聞いた音を笑う人もいたが、オスカーは知らせてくれなければ氷の変化に気づかなかったと礼を言った。
帰り際、グレサの子は石を投げれば同じ音がするかと尋ねた。バルドは氷へ近づく実験を断り、乾いた木片を二つ打ち合わせて音の違いを教えた。ミラは聞こえたものと、確かめられたものを分けて帳面に書いた。夜になればまた川から音がするかもしれない。人々はそれを知りながら、安全な道を選んで家へ戻った。




