塩を量る匙
サラの鍋のそばに、見慣れない木の匙が置かれていた。料理を手伝う旅人が持参したもので、いつも使う匙よりひと回り深い。塩を一杯入れたつもりが味が濃くなり、何人かが水を欲しがった。サラは謝り、余った汁を薄めた。塩が貴重な冬に、量の違いは小さな失敗ではない。
ミラは匙の形を一つに揃えれば済むと思った。しかし台所は家ごとに違い、細い柄を持てない老人もいる。サラは重さを量れる秤を使う日と、目分量で十分な日を分けていると言った。料理をすべて数字にすれば間違わないわけではない。大鍋の火力が違えば、水の減り方も変わる。
同じ鍋の汁を食べても、塩気の感じ方は皆違う。冬の採薪から戻った若者は濃い味を好み、喉を痛めた老人は薄いものを選んだ。サラは一杯ずつの希望を聞いてから、取り分ける順番を変えた。大きな鍋をかき混ぜる人の手間は少し増えたが、食べ残しは以前より減った。
ニーナは体調のため塩分を控える必要のある者には、濃さを選べる汁を先に取り分けるよう勧めた。薬の代わりに料理を変えれば治る、などとは言わない。台所の隅に「後から塩を足せる分」を置くと、年配の男が遠慮がちに自分で味を調えた。サラは誰がどの器を選んだか記録しない。食事の事情まで広場に貼る必要はない。
旅人は持参の匙を袋へ戻しかけたが、サラは道具の違いを教えてくれたと礼を言った。次は小さな器に一杯ずつ量り、皆で味を確かめる役を任せた。ミラは空の塩壺を洗い、在庫表に数字を書いた。節約のために味をなくすのではない。温かな汁を食べる人が、自分の一杯を安心して選べる台所にしたかった。




