坂の薄氷
ルークに案内された坂は、朝日が差している側だけ乾いて見えた。荷を背負った老婆が滑った跡があり、本人は転ばずに済んだものの、桶の水を半分こぼしていた。ミラは滑りやすい場所を見つけると、通る人が分かるよう枝を立てた。だが枝だけでは雪が積もれば見えなくなる。オスカーが杭を持ってきて、通行を止める範囲を確かめた。
坂の上の家では、凍った部分を避けて歩くと他人の畑を横切ることになる。持ち主のハロルドは通ってよいと言ったが、苗を育てる予定の場所だけは踏んでほしくなかった。ミラは荷運びの若者と歩き、曲がる角度を少し変えた。霜柱を踏めば足音がした。無理に氷を割ろうとすると石ごと浮くため、表面を砕く作業は日が高くなってから行うことにした。
迂回路に決めた路地にも問題はあった。軒から落ちた雪が午後には溶けて、夕刻に再び凍る。オスカーは見回りの時刻を朝だけでなく日暮れにも増やすべきか考えたが、見張り全員を使うわけにはいかない。近くの家へ様子を知らせてもらい、変化があった時だけ確認することになった。桶を持つ老婆は、自分も窓から道を見ておくよと引き受けた。
砂を撒こうという案も出たが、砂袋は井戸の足場に使う分が少し残るだけだった。ギルは古い粗布を敷くと濡れて余計に滑ると告げた。皆でできることを並べても、役に立たない案はある。代わりに朝だけ坂を閉じ、桶を運ぶ者は乾いた長い道を選ぶ。ベルクは通行の変更を共同鍋の席にも知らせた。
その夕方、先に転びかけた老婆が坂の下で待っていた。自分の家の前にも同じ氷が張るという。ルークはそこまで歩き、明朝の見回りを頼まれた。ミラは子どもだけに任せないようオスカーに伝えた。朝の道を一本変えても、冬の寒さがなくなるわけではない。けれど今朝の一人が明日は転ばずに済むかもしれなかった。




