冬の戸口
雪の気配が濃くなった朝、ミラは広場の戸口に立ち、各家から上がる煙を見た。井戸にはまだ工事の札があり、橋は渡れず、税の支払いも消えていない。それでも誰かが一人で困る前に声を掛ける道が少しずつできていた。
サラは小鍋の火を整え、レアとリネは針仕事を始めている。ティアは住まいの屋根を確かめ、ハロルドは春の種袋を数えた。ベルクは新しい税の通知を読み直し、エダは休む日を帳面へ先に書き込んだ。
村の入口には峠の連絡に使う木札が掛かっていた。彼らの井戸の具合はまだ分からない。グレサとの境界も決まらず、山道には霧と落石の危険がある。村の外の人たちも、それぞれの冬支度を続けている。
ルークが戸口へ走り込み、朝の坂に薄い氷が張ったと教えた。ミラは手袋を取り、少年と一緒に見に行くことにした。大きな報告が届く日でも、足を滑らせる石があれば先に確かめる。
ベルクは集めた記録の束を棚へ戻し、春に使う白い紙を一枚残した。書き残すことが増え、エダ一人では読み切れない日もある。ティアは針仕事の合間に字を覚え、ルークは道の危険を絵で知らせる。誰かの暮らしが他の誰かを少しずつ支えるようになっていた。だが冬はまだ始まるところで、雪が深くなれば新しい困りごとも現れる。ミラは全部を知ったふりをせず、今日見つかった氷へ向かった。
広場の鐘が短く鳴り、見張りが次の人へ持ち場を渡した。ミラは凍った土を踏みしめ、振り返って家々を見た。守りたいものはまだ手の届く場所にある。今日もその一つを減らさずに済むよう、彼女は少年の歩幅に合わせて坂を上った。




