空の荷車
商人フェルンの荷車は帰りの荷が軽かった。村には売れる物が少ないと思われていたからだ。ミラが干した蕪と修理した麻袋を並べると、フェルンは一つずつ手に取って確かめた。蕪は保存が利くが、切り方が不揃いで値を付けにくい。麻袋は縫い目が強くても、印がないと持ち主が分からない。
ニーナとレアが同じ机に座り、蕪の大きさと袋の縫い目を揃える相談をした。どちらも自分の仕事を他人に決められるのを好まない。ミラは「全部同じに」と言う代わりに、フェルンが買える条件を聞き直した。乾き具合と重さが分かればよい。袋は買い取るのでなく預かりにすれば、村へ戻る時にも使えるという。
乾燥した蕪を量ると、同じ大きさの袋でも重さが違った。フェルンは湿り気が残ると旅の途中で傷むと言い、指で裂いた断面を見せた。ニーナは悔しそうだったが、売らずに鍋へ回せるものと、もっと乾かせるものを分けた。商品にできないことと、食べられないことは同じではない。
麻袋には村の小さな印を縫い付ける案が出た。しかしレアは、針仕事が増えすぎると言った。そこで袋の口へ色糸を結ぶだけにし、帰ってきた時に誰の袋か分かるよう帳面へ記した。誰かが一度考えた印を、他人が何時間も掛けて縫わなくてよい。少ない手間で守れる約束が一つ増えた。
荷車には小さな包みが三つ載った。それだけで大きな利益にはならない。だが買うだけだった村から、戻って来る荷が生まれた。フェルンは代金を次の訪問時に渡すと約束し、エダの帳面に自分の印を押した。村長は信用を心配したが、ミラは控えを二枚作って双方で持つよう頼んだ。荷車が丘を越えると、道には空の轍ではなく、確かな往復の約束が残った。




