峠の木札
行き違いを減らすため、峠の宿から荷車の通過を知らせる木札を回す案が届いた。荷が宿を出る時に札を預け、次の宿場へ着いたら返す仕組みだという。フェルンは便利だと喜んだが、ミラは札が戻らない場合を尋ねた。
木札を一枚しか作らなければ、なくした時に全て止まる。複数作れば誰が持っているか分からなくなる。エダは番号を入れ、出発地と到着地を紙にも残す案を出した。ただし紙を届ける人が必要だった。
最初は二つの宿とハルヴェの間だけ試すことになった。荷の中身や商人の名前を村中へ知らせるのではなく、到着予定と連絡先だけを確認する。守るべき情報には違いがある。
試しの日、札は予定より遅れて届いた。宿で雨が止むのを待っていたからだ。遅れたという知らせそのものが届かない難しさが分かり、鐘を鳴らしても峠までは届かないと皆で笑った。
木札の番号は鋭い刃で刻まず、指で触れても分かる深さに削った。暗い宿で荷運びの人が札を取り違えないためだ。エダは試作品を目の悪い老人へ渡し、触って区別できるか確かめた。刻みが似ているものは作り直す。フェルンはそんな手間が要るのかと驚いたが、誤った札で捜索へ出る方がずっと大変だと納得した。村の子どもは木札を遊びに使いたがったが、練習用の別札を作ってもらった。宿の主人は札に泥が付けば刻み目が見えなくなると言った。使う前に乾いた布で拭くことも手順に加えた。
それでも札に刻まれた二つの刻み目は、誰かが道を通った証しになった。ミラは新しい仕組みを大きく広める前に、なくした札の扱いまで決めようと提案した。




