古い年貢帳
村の倉庫を整理していたベルクが、先代の村長の年貢帳を見つけた。紙は虫に食われていたが、橋がまだ使えた頃の運搬費が記されている。エダは税の申請に役立つかもしれないと考えた。
読み進めると、同じ収穫量でも支払いが少ない年があった。理由は欄外に小さく書かれた『徴収後の不足』という言葉だけ。ベルクは父から聞いた飢饉の話を思い出し、数字の少なさを喜ぶ気にはなれなかった。
ミラは昔の帳面を今の証拠として出す前に、何を示せるか確かめた。橋が使えた時期の費用を知る手がかりにはなるが、現在の税額を直接変える証拠ではない。ユストへ写しを送るなら、分からない箇所も分からないまま伝える必要がある。
エダは頁を乾いた布で包み、傷みが広がらない場所へ移した。子どもは昔の文字を読みたがり、ベルクは家で聞いたことのある名前を指差した。亡くなった人の仕事が、誰にも気づかれず倉庫の奥に残っていた。
ベルクは帳面にあった父の署名を見つけ、指先でなぞった。父が何を考えていたかはもう聞けない。だが橋の運搬費を何度も書き直した跡から、少しでも村の負担を減らそうとしていたことは想像できた。ミラは古い数字を今の計算へ無理に足さず、その頁を別に写した。原本が傷んでも記憶が失われないようにするためだ。紙を包む布には、どの年のものか読み取れる範囲だけ書き添えた。帳面の端には食料を届けた家の名前もあった。ベルクは一軒ごとに古い記憶をたどり、声に出さず静かに頁をめくった。
夕方、ミラは帳面の最初の頁を開いた。今と同じように誰かが麦を量り、橋を渡り、冬を心配していた。村の困りごとは今日初めて生まれたものではなかった。




