逃げ道の幅
家畜小屋から火が出た場合、村人は広場へ走る。しかし倉庫の横の細道は、荷車一台が止まれば塞がる。ミラは水甕を見に行った帰りに、それを確かめた。試しに空の荷車を置いてもらうと、ルークの肩さえ通りにくい。村長は「普段は誰も止めない」と言った。だが普段ではない時のための道だった。
広げるには鍛冶屋の鉄くず置き場を移さねばならない。ガルドはそれを拒んだ。鉄は雪に埋もれれば行方が分からなくなる。ミラは広場に場所を取る案を撤回し、鍛冶屋の裏へ棚を増やすことを提案した。屋根を延ばす材はギルの工房から出し、代わりに鍛冶屋は棚の釘を打つ。互いの損を数えた結果、細道に二人並べる余地ができた。
細道を片付け始めると、古い鉄だけでなく壊れた農具も出てきた。ガルドは何年も修理するつもりで置いていたと言う。ミラは勝手に捨てず、使えるものと直すものを本人に選んでもらった。片付けは単なる掃除ではなかった。持ち主の記憶や仕事の予定まで移す必要がある。
棚が完成すると、ガルドは釘の位置を手で確かめた。重い鉄を高い場所へ載せれば落下が怖いので、下段だけを荷置きに使う。子どもが近道にしないよう、工房の裏には低い柵も付けた。通るために広げた道と、通らないために囲った場所が隣り合った。ミラはどちらにも、同じ慎重さが必要だと感じた。
完成した日に、ミラは子どもたちへ新しい道を歩かせた。大人の脚では通れても、小さな子が走れば転ぶ石が残っていたからだ。最後の石を拾ったのはハロルドだった。道は広くなったが、村の建物は一つも増えていない。それでも火が出た時、誰かがぶつかって倒れる危険は減った。ベルクは広場に立ち、家々をつなぐ細い余白を長く眺めていた。




