柵のこちら側
村外れの菜園が荒らされ、足跡が泥に残った。鹿に似ているが蹄の形が深い。森番オスカーは痩せた野猪かもしれないと言った。農夫ハロルドは罠を増やしたがり、子どものいる家は道沿いに罠を置くことへ反対した。ミラは畑を囲む柵を提案したものの、木材が足りないことは分かっていた。
まず被害の出た場所にだけ仮柵を立てた。畑へ入る道は残し、夜に閉める門を付けた。ところが門が重く、朝にオル婆が通れない。ギルは蝶番の位置を直し、紐を引けば開く仕組みに変えた。ハロルドは出入りが面倒だとぼやいたが、自分の畑が荒らされた夜を思い出し、最後には鍵を確かめた。
柵に使う木を選ぶ日、ギルは古い板を一本ずつ叩いた。音が鈍いものは内側が傷んでいる。見た目だけで丈夫さを決めないよう、ルークにも違いを聞かせた。長い板を立てれば手早く囲えるが、倒れた時に道を塞ぐ恐れがあった。短い柱を繋ぎ、壊れた部分だけ直せる形にした。
門の開け閉めを任されたのは畑を使う家々だった。鍵を一人に持たせると、遅く帰った人が困る。そこで内側から開けられる簡単な留め具を作り、夕暮れ前に最後の当番が確かめた。獣の侵入が減っても見回りはやめない。囲いの外に新しい足跡が出れば、守る場所を見直す必要があるからだ。
足跡が翌朝どこへ続いたのか、ルークたちが追いかけようとした。ミラは追跡を止め、足跡を紙へ写すよう頼んだ。「獣が逃げたなら、それでいい」。追い詰めれば、畑の外で人を襲うかもしれない。柵の向こうで枝が鳴っても、見張りは弓を引かなかった。畑を守るために森の生き物を皆殺しにする必要はない。村の境界は、初めて争わずに引かれた。




