名前のない傷
収穫作業の後、若い男が手を布で巻いたまま仕事へ来た。小さな切り傷だと言い、誰にも知らせなかった。だが麻袋を持つたび顔をしかめるので、リネが気づいた。男は休めば賃金が減ると心配していた。
ニーナは傷の状態を確かめ、必要な手当てと医者へ相談すべき兆候を伝えた。ミラは賃金の問題を別に話し、怪我をした日の仕事をなかったことにしない方法を考えた。共同の仕事なら、短い作業にも対価をつけられる。
本人は軽い仕分け仕事へ移ることになったが、慣れない帳面に戸惑った。エダが数字を読んで見せ、まず袋の印を照らし合わせるところから教えた。男は自分にもできることがあると分かり、ようやく手の布を緩めた。
誰が怪我をしたかを広場で貼り出す案には、ミラが反対した。危ない作業を調べるために必要なのは、どこで何が起きたかであり、本人の恥を増やすことではない。記録には道具の状態と作業時間を中心に残した。
男の傷は、刃の欠けた鎌を使った時についたと分かった。誰かが道具を壊したと責める声が出たが、鎌は長く点検されていなかった。ギルはその刃を別に置き、修理できるか確かめた。作業前の簡単な点検を増やすことになったものの、朝の仕事を遅らせすぎない工夫が要る。ハロルドは一列に並んで確かめるのでなく、道具を受け取る人がその場で見る方法を選んだ。傷の原因を知ることが次の怪我を防ぐ。
夕方、男は片手で持てる小さな袋だけを運び、深く頭を下げた。リネは礼を返して笑った。ミラは皆が傷を隠さずに済むなら、怪我の数が一時的に増えて記録されても、それは悪いことばかりではないと思った。




