捨てられない布
旅人が村の外れへ濡れた衣服を置いていった。着替えた後に捨てたらしいが、近くの子どもが拾おうとしていた。レアは使える布なら繕いたいと思ったものの、誰が着ていたか分からず、匂いも強かった。
ミラはまず持ち主が戻らないか宿に尋ねた。衣服は忘れ物かもしれない。宿の主人は客に心当たりがあると言い、次の宿場へ問い合わせを出した。拾った物をすぐ村の共有物にしてよいわけではなかった。
数日後、持ち主は不要だから処分してよいと返答した。レアは傷みを確かめ、清潔にできない部分は使わないと決めた。繕いに回せる布は少しだけだったが、残りを薪と一緒に燃やすのは避け、処分場所を分けた。
子どもはなぜ綺麗に見える布を使わないのか尋ねた。レアは布の中に汚れが残ることもあると説明し、洗える端切れを渡した。ルークは自分の袋に縫い付け、少し曲がった線を得意げに見せた。
旅人が置いた衣服のポケットには小さな貝殻が入っていた。レアはこれも一緒に処分してよいのか迷い、宿へ連絡した。持ち主は貝殻だけ返してほしいと頼んだ。何でもない飾りに見えても、その人には大切な物だったらしい。返す包みに布を一片添えると、数日後に礼の手紙が届いた。ミラは拾った衣服の処理より長く掛かったやりとりを眺め、人の持ち物には値段では測れない意味があると知った。布を洗う水にも限りがある。レアは使えるかどうか分からない衣服より、村人から頼まれた繕い物を先に済ませた。
ミラは拾ったものにも人の暮らしが残っていると感じた。困っている時ほど、手に入った品を急いで使いたくなる。それでも確かめる時間を惜しまないことが、後の困りごとを減らしていた。




