二枚の地図
エダが描く村の地図と、郡都から届いた古い地図では、川の形が違っていた。グレサとの境界争いにも関わる場所で、ベルクはどちらを基に話すべきか迷った。ミラは紙を重ねるだけでなく、川辺を歩いてみることにした。
古い地図にはかつての柳が描かれ、今は根だけが残っている。洪水で川筋が変わったという老人の証言は、この場所のことらしい。だが土地の権利が水と一緒に動いたかどうかは、村だけでは決められなかった。
グレサの代表と同じ地面に立ち、二枚の地図の違いを確かめた。片方だけが間違っていると決めず、測った時期の違いを書き込む。双方の畑へ水が入らないよう、今ある仮の溝だけ手入れすることで合意した。
ルークは昔の川の跡で丸い石を拾った。エダはその石を地図の上へ置き、ここも昔は水が流れたのだろうかと考えた。ミラは想像と記録を分けるよう頼み、石は少年へ返した。
川辺の測量には長い縄が使われた。濡れた縄は伸びて長さが変わるため、エダは乾いた時の値と混ぜないようにした。グレサの代表は縄を持つ役を買って出たが、足元が滑る場所ではそれ以上進まなかった。古い地図の線がどんな方法で引かれたかは分からない。ミラは答えを急ぐより、今年の測り方を次の人が分かるよう書き残した。並んだ柳の影が、川面へ細く伸びていた。境界の柳には名前の札を付けなかった。名前を決めるだけで権利を主張しているように思われることを、両村は恐れた。
暮れる前、グレサの代表は自分の地図を持って帰った。答えは出ていない。それでも同じ場所に立って違いを確かめたことで、次に話すための土台は少し固くなった。




