帰らない荷車
郡都から来るはずの荷車が、日暮れになっても現れなかった。塩と油が積まれている予定で、サラは食事の準備を組み直した。フェルンの知り合いが運んでいるため、誰もが何か起きたのではと心配した。
ミラはすぐ山へ捜索隊を出すのでなく、最後に見た人を確かめた。山の入口で車輪を直していたという知らせがあり、セランは工具を持って同行を申し出た。オスカーは日暮れの道を避け、翌朝になってから出ることを決めた。
朝、二人は荷車を峠の手前で見つけた。運び手は車軸の金具が緩んで進めず、近くの宿へ泊まっていた。怪我はなく、荷も無事だった。荷車には危険を知らせる札が掛かっていたが、村まで連絡を送る人がいなかった。
セランは金具を締め直し、山を下りる速度を落とすよう頼んだ。運び手は遅れを謝り、村では荷受けを予定していた人が交代した。遅延の費用を誰が負担するかは、取引先と後で相談することにした。
運び手が泊まった宿では、知らせを書いた紙を渡せる人がいなかった。街道の向こうへ行く客がいれば頼めるが、必ずいるとは限らない。フェルンは次回から出発時に立ち寄る宿を二つ決め、長く遅れた時だけ確認する方法を考えた。毎日伝令を出す余裕はどの村にもない。荷車が戻る前、セランは車軸の異音を聞き分けるコツを運び手へ教えた。修理を請け負うことと、次の故障を減らすことは両方必要だった。荷車の持ち主が変われば修理の記録も渡す。セランは金具の位置を紙に描き、次に扱う職人が分かるようにした。
夕方、塩袋が倉庫へ届いた。ミラは無事だったからと心配を笑い飛ばさなかった。行き先と途中の宿を知らせ合えれば、次は危険な夜道へ人を出さずに済むかもしれない。




