見えない坂
山道の落石を見に行ったオスカーが、霧で道標を見失った。慣れた道のはずなのに、白い空気の中では谷側へ寄りかける。戻ってきた彼は、霧の出る日は運搬を止めるよう頼んだ。
フェルンは商いの予定がずれると困ったが、荷を落とす方が大きな損になる。オスカーは道の危ない曲がり角を描き、木々の間に縄を張る案も検討した。しかし縄が風で切れれば、逆に人を危険な方へ導くかもしれない。
村は霧の日の合図を鐘ではなく道の入口の札で示すことにした。文字を読めない人にも分かるよう、白い布を巻いた杖を横に渡す。通れる日だけ杖を外すのではなく、中止した時に誰が確認するかを決めた。
最初の朝、霧は薄かった。荷運びの若者は行けると言い張ったが、谷の中ほどは見えない。結局、昼まで待ってから少量だけ運んだ。待っている間に積み荷を濡らさない場所を探し、古い屋根を直す仕事が生まれた。
霧が薄れた昼、谷の向こうから鳥の声が聞こえた。オスカーは声だけで距離を測れないと若者へ話した。遠くの音が近くに聞こえる日もある。峠の宿へ戻る時間を計算し、余裕がない日は出発しないようにする。待機していた荷には腐りやすい品があり、商人は別の方法を考えなければならなかった。ミラは中止の決まりが新しい不便を生むことも見落とさず、品の性質によって予定を早めに組むよう提案した。午後になっても霧の残る谷には荷を下ろす音が響いた。皆が同じ時刻に出発するとは限らず、各便ごとに判断が要った。
ミラは晴れた日の道を見つめた。危険はいつも目に見えるわけではない。見えない日に歩かないと決めることも、道を守る一つの方法だった。




