裁縫箱の鍵
レアの針箱から細い銀針が一本見つからなくなった。高価な道具なので皆が探したが、昼まで出てこない。最近手伝い始めたリネは顔を青くした。以前、物がなくなると真っ先に疑われた経験があるからだ。
レアは誰の持ち物も勝手に調べないと決め、仕事場の床から順に探した。ミラも同行し、布の切れ端を一枚ずつ広げる。針が落ちたままなら怪我につながるため、探す理由は盗人を見つけることだけではなかった。
古い袖の折り目から銀針が出てきた。前日の繕い物に刺したまま、布を畳んでいたのだ。レアは自分の不注意を認め、リネに謝った。リネは怒らなかったが、震える手を隠せなかった。
針の数を作業前後に確かめる役を決めた。箱へ鍵を掛ける案もあったが、仕事のたびに持ち主を探していては困る。鍵は夜だけ使い、昼は誰でも確認できる印付きの板へ針を並べた。
レアは針を並べる板に、それぞれ長さの違う溝を削った。銀針は同じように見えて用途が異なる。リネは指先がまだ敏感だったので、布の端を使って位置を確かめた。昼休み、ティアは店を覗き、妹が笑っているのを見て少し安心した。しかしレアは、本人が笑う日にも急に不安になることはあると静かに言った。約束のない持ち物検査をしないという決まりは、道具を管理する方法と同じくらい大切だった。針箱を閉じる時、リネは昨日よりゆっくり道具を数えた。疑われないためでなく、誰も踏まないためだと自分に言い聞かせた。
その夜、ティアはリネの手が落ち着くまで隣でお茶を飲んだ。道具が一つ見つかっただけで、昔の怖さまで消えるわけではない。ミラは翌朝、何事もなかったようにリネの仕事へ相談を持ちかけた。




