粉屋の約束
粉屋が村の外から麦の製粉を頼まれた。仕事が増えるのは嬉しいが、水車は前の修理からまだ長く動かせない日がある。サラは冬用の粉を先に挽いてほしいと言い、外から来た客は支払うから先にしてくれと頼んだ。
ベルクは村の仕事を優先する方針を伝えたが、どこまでが村の必要量かは決めていなかった。ミラは粉屋とサラに相談し、当面の食事に使う分、備蓄として挽く分、余力で引き受ける分を分けた。
客は不服だったが、納期がはっきりするなら待つと言った。粉屋は無理な夜仕事をしない代わり、翌朝の運転予定を掲示する。機械の具合が悪ければ止める条件も書いた。
翌日、水位が下がって水車は予定ほど回らなかった。粉屋は謝罪し、客は持ち帰る麦を減らして日を改めた。ミラは約束の遅れを隠さず、村の粉が無くならなかったことも確かめた。
粉屋は客から預かった麦に札を付け、村の麦と混ざらないようにした。水車が止まると置き場の袋が増え、通路が狭くなる。サラは粉を受け取る高齢者が通れなくなったと知らせ、袋を積む高さを変えた。客も自分の麦を早く挽いてほしい気持ちを話し、粉屋は遅れる理由を説明した。誰にも同じ事情はないが、どの袋も勝手に使えない。小麦の白い粉は戸口まで舞い、掃除の手間も増えた。小麦を預けた客には控えを手渡した。袋が一つ足りなくなった時、互いの記憶だけを頼りに争わずに済むようにするためだった。
夜の粉屋には水の音だけが残った。仕事を増やすことと、毎日動かし続けることは違う。水車を守るために止める日を決めたのは、そこで働く人の暮らしを守るためでもあった。




