乾かない薬草
オル婆の薬草棚に黴が出た。雨の続いた週に乾燥が足りなかったらしい。オル婆は匂いで違いを知ったが、離れて見れば綺麗な葉と変わらなかった。ニーナは棚の薬草を治療に使わないよう頼んだ。
捨てる量が多いと分かり、若者たちは惜しがった。オル婆はその気持ちを聞きながら、体を治すためのものが体を害してはならないと言った。別の棚の葉まで疑わしくなり、何日干したか、どこから採ったかを確かめた。
薬草を日当たりのよい広場へ移そうとしたが、そこは食料の乾燥場所でもある。ミラは一緒に干すと混同するため、棚の位置を少しずらし、風の通る庇の下へ置く案を出した。雨の日だけでなく、夜露の入り方も見なければならない。
ニーナは薬草を仕分ける人へ、分からない葉を勝手に名前で呼ばないよう頼んだ。絵を描き、採取した人の記憶と照らし合わせる。確かなものだけを残すと棚は寂しくなったが、見た目だけの豊かさより安全だった。
薬草を捨てる袋には大きな印が付けられ、誤って元の棚へ戻されないよう別の戸棚に置かれた。オル婆は全てを任せるのではなく、名前を確認する役だけ若者に教えた。ミラは葉の形を写した絵を見たが、同じ色のものが何種類もあることに驚いた。覚えたつもりで使う方が怖い。棚を拭き終えるまで時間が掛かり、オル婆はその日は別の仕事を断った。取り替えの利かない知識にも休む時間が必要だった。オル婆が外へ出す袋を結ぶ手つきは遅かった。長く集めた葉を捨てるのは悲しい。それでも彼女は袋を開け直さなかった。
オル婆は空になった棚を撫で、来年は干し方を変えようと言った。ミラはその話を帳面へ書いた。失ったものを数えることも、次の怪我や病を防ぐ手がかりになる。




